ミロク製作所

TAKUMI INTERVIEW

匠インタビュー

伝統を守りながら
新しい挑戦を続ける、
銃身の「匠」

長谷川彰

はせがわあきら

製造部機械課

銃身の「曲り」を直す、ミロクだけの伝統芸

職人に必要な資質は、技術を磨きあげる忍耐と常に上を目指す向上心。それを持つ者は必然的に「負けず嫌い」という性格を持つのかもしれない。そう思わせるのは、「いつかは先輩も師匠も超えてみせる」と語る、製造部配属の長谷川だ。高校3年間は野球部。進路に迷っていた際に、当時尊敬していた先輩がミロクに入社したことを知った。県内就職を希望していたこともあり、就職先には迷いなくミロクを選んだ。

「別に銃が好きというわけでもなかった」と言う長谷川は、今、選ばれた職人しか関わることのできない「曲り直し」と呼ばれる作業の担当をしている。「曲り直し」は、銃身を覗いてみて曲がっていれば直す作業。と「言うは易し」だ。目視で腔中の影の変化を感じ取り、僅かでも曲がりがあれば専用の器具でまっすぐに直していくのだが、微かな曲がりは判断がしづらい上に直しにくい。えいっとばかりに力を入れると逆方向に曲がってしまい、銃身が使い物にならなくなってしまう。とはいえ、ほんの少しでも銃身が曲がったままでは製品として成り立たない。ここで見逃してしまうと後の工程が全て無駄になってしまうのだ。微妙な作業ゆえに自動化ができず、目視と指先の感覚が頼りの、まさに「匠の技」が必要とされる作業だ。

自分が携わり、初めてものづくりの奥深さを知る

長谷川は、入社してしばらくは機械加工を担当していた。転機が訪れたのは、当時「曲り直し」を担当していた職人の緊急入院。代わりの「曲り直し」担当として、長谷川が指名されたのだ。

指名を受けた責任から「代わりは他にいない。頼まれたからには自分がやらなければ」と奮起し、毎日ひたすら銃身の中の影を見る作業に没頭した。元運動部らしい根気と集中力を発揮し、通常習得するまでには2〜3年はかかるというその作業を1〜2ヶ月で身につけ、周囲を驚かせた。そこから仕事がおもしろくなったという。

「当時の自分は、師匠が銃身と向かい合っているのを見て憧れこそすれ、まさか自分が『曲り直し』に携わるなんて思ってもいませんでした。ところが師匠が入院することになって、初めて自分の身にふりかかってきました。親身に教えてもらいましたが、だからといってすぐに師匠の穴を埋められるわけもなく、毎日残業して練習しても一向にカンが掴めず、師匠の職人芸の凄さを実感しました」

機械でできない部分こそ、
継承していかなければならない

今、長谷川は後輩に「曲り直し」の指導もしている。自分のように急に受け継がなくてもいいように、わかりやすい指導方法の確立や平準化を推し進めて、後輩たちが無理なく成長できる環境を整えている。また、班の中での技能の習熟度アップなどにも力を入れ、通常は馴染みのない作業でもやる気を持って取り組めるように力を入れている。

「継承していかなければいけない工程はたくさんあるかと思いますが、その中でも機械でできない手技の部分は絶やさないように注意していかなければいけません。自分は今、班長という肩書きですが、今後もし異動したり昇進したりして現場に入れなくなっても、誰かが代わりになって仕事が回せるような体制を整えていきたい」と、職場環境の改善に意欲を見せる。

伝統を守りながら新しいチャレンジを続ける

「体育系の発想だとは思いますが、お互いに切磋琢磨して技術を向上させていきたい。自分自身も『負けたくない』という気持ちがモチベーションになっている部分があります。師匠を越えたいし、仕事を教えた後輩にも負けたくない。経験を積んでも慢心することなく、チャレンジを続けていきたいです。そして仲間とともにレベルアップをして、いつか目標である師匠を超えてみせます」

伝統を守りながら新しい挑戦を続け、仲間の成長を支えることで自分自身を成長させる。そんな職場を目指す長谷川の言葉からは、会社と仲間たちへの嘘のない信頼が伝わってきた。

NEXT INTERVIEW