ミロク製作所

TAKUMI INTERVIEW

匠インタビュー

伝統を受け継ぎ次世代へ継承する、
ミロクの「匠」

山本州弘

やまもとくにひろ

製造部仕上課

1/100ミリの誤差も許されない「ミロク銃の心臓部」を担う

2004年の入社以来、ミロク銃製造に従事してきた山本。入社当時は機械班に所属。その後、仕上げ課に異動し、「カブ合わせ」と呼ばれる開閉の機構部品を合わせる作業を行うことに。山本は、周囲が驚くほどの速さと正確さでめきめきと腕を上げ、今では金属と金属をピタっと合わせる「ゼロ嵌合(カンゴウ)」で右に出る者はいないほど。そんな山本は、ミロクの銃づくりを支える「匠」の1人。

射撃のたびに火薬の衝撃を受ける銃において、最も大切なことの1つは「耐久性」。それを左右する「ミロク銃の心臓部」でもあるフレームと銃身は、1/100mmの隙間も許されない。競ってもなく隙間もない、ピタっとパーツ同士が合っている状態は「ゼロ嵌合」呼ばれる。その部分の仕上げ作業を任されるのは匠の技を持つ者だけ。

「この業務に携わった時、先輩方からは『ゼロ嵌合は、世界最高レベルの耐久性を可能にする、ミロクの誇り』と聞かされました。今でも作業に入る時は、スッと背筋が伸びます」

美容師からの転身後、いつしか皆が認める
プロフェッショナルに

山本は、もともとは美容師だった。「どうも自分は美容師には向いていない」と退職し、知人が働いていたミロクに興味を持ち転職。

「銃を作っている会社なんて他になかったし、どうせなら簡単には手に入らない技術を極めたいと思いました。面接に行ったらすぐに採用になって、翌日から出社したんですよ(笑)」

機械系の仕事にはまったく縁がなかった山本は、ミロク入社後、工具の扱い方はもちろん、名称に至るまで真っ白な状態から学ぶことに。しかし手先が器用だったため、最初からものづくりへのセンスがあった。中でもやすりを使った作業の磨きは飛び抜けていて、未経験にもかかわらず「これは天職じゃないか!?」と自分でもびっくりするほど美しく仕上げることができたそうだ。

「もともと1人で技術を磨くことは苦ではなかったため、誰に言われるまでもなく黙々と作業に没頭していきました。ただの自己満足だったんですけどね。たとえ誰も気づかなくても、前よりも早く、きれいに仕上がると嬉しいし、純粋に楽しかった」

その繰り返しの日々を続けているうちに、山本の技術力はだんだんと他の従業員からも注目されるようになり、いつしか熟練の職人だけが持つ技能を身につけていった。

世界最高峰のミロクの技を、次世代へ継承する

若手から頼りにされ、先輩や上司から信頼される存在となった山本が、いま力を入れようとしているのは人材育成だ。ミロク銃に関する深い知識と、豊富な経験による製造のノウハウをまとめ、率先垂範し若手の育成に取り組もうとしている。

「今まで自分の前にいたベテランの先輩方が退職するたびに、新しくミロクを支えていく人材の育成が自分の役割だと感じるようになりました。先代から受け継いできた『ゼロ嵌合』を始めとする世界最高峰のミロクの技を、次世代へ伝え、継承していきたいです」

量産ラインとはいえほとんどが手作業。ミロクの技術職は全員が職人といえる。その1人1人が仕事に対して誇りを持ち、妥協のない仕事を行うことで、「ミロク銃」が世界にその名を轟かせることになる。

伝統とテクノロジーの合わせ技で、新しい「ものづくり」を生み出したい

「伝統を守り、次世代へ受け継ぐことが課題」と言い切る山本。だが、守りだけではなく攻めの姿勢も見せる。

「工業製品は、個人の経験や技術だけではなく機械や道具の善し悪しにも左右されます。日本の工業は後退したと言われていますが、まだまだ発展の余地はあるはず。伝統を守りつつ、最新の設備環境を整えれば、さらに高品質な製品を生み出すことが可能になるでしょう。ミロクにしかない技術を使い、ミロクだからこそできる新しいものづくりを、現場の皆と一緒に作り出していきたいと考えています」

「ミロクの心臓」を支える、仕事に誇りと責任を持つ職人の言葉は、力強く未来に向かっている。

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